こんにちは!
高畠町地域おこし協力隊の松原由侑(まつばらゆう)です。
この企画は高畠町で活躍中の方のもとに出向き、町を知るために一緒にお仕事をさせていただく企画です!
7月は「とくし丸」さんとご一緒させていただきましたので、その活動を振り返っていきたいと思
います。
~人と人をつなぐ、移動販売~
コンビニよりコンビニエンス、移動スーパー「とくし丸」。
耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
とくし丸はその名の通り、徳島県発祥、全国におよそ1200台の車があると言われています。
山形県には18台ほど走っているそうですが、そのうちの一つが高畠町にあります。
今回 私は、普段、在庫やお客さんの注文品でいっぱいの助手席に乗り込み、販売に同行しました。
体験期間中、それらの商品は車の上の荷台に積むか、私のお膝の上に載せていくスタイルです。
本来、トマトをおくべき場所を私が占領しているのですから、これはやむを得ません…。
我が子のように大切に抱えていきます。
“隣近所同士を繋げていきたい”
体験初日、この町でとくし丸を営む山田洋貴(やまだひろき)さんは、そんな想いでこの仕事をはじめたと言っていたことが印象に残っています。
「昔は隣近所へ行って、お茶を飲みに行ったり話に出かけたりしたけど、最近はそういうことが少なくなってきていると思っていて。とくし丸を使うことで、そういう付き合いがまた生まれたらいいなと思ってやってます」
年を取ると雪かきや通院などが自分一人で思うようにできなくなってくる。
また、近年増加傾向にある災害などの非常事態には安否確認をし合えることが大事になってくる。
そんなときに、すぐ近くに住む人と交流があれば、お互いに声を掛け、助け合いがしやすくなる。
普段の買い物を通して人と人を繋ぎ、より安心の持てる生活環境になっていく一助になれば…という考えのもと、この仕事を通して町内のあちこちに住まう人たちを巡っています。
基本的な販売方法は、利用されている方のお宅の前に車を停め、店を拡げます。
トラックの両脇と後ろの扉を上げて、椅子やテーブルを出し、野菜を見やすい位置に置き、総菜各種やパン、ときにはお菓子も収納された棚から下ろして並べ、お客様が買い物しやすくなるようセッティングを行います。
次の場所へ移動するときは、もちろん全て元の場所へ片付けて、移動後は再び店づくりをしていきます。
車の移動、店の展開、片付け、再び車の移動、店の展開、片付け、また移動…
これを延々と繰り返していくのが、とくし丸の移動販売なのです。
移動先が近いと、早くて1分足らずで到着するので、次の場所が近いほど店を広げるまでのペースが速くなります。
30度を超えるような暑い日は噴き出た汗を含んだ服がべったりと身に張り付き、
雨の降る日は接客の最中にもどんどん雨粒に打たれ、気づけば全身じっとりと濡れていることも少なくありません…。
山田さんは平然とした様子でしたが、私は早々に疲労困憊です。(笑)
この生活に慣れていないことや普段運動をしないせいもあるのでしょうが、何度も乗ったり降りたりするだけでも、身体は疲れ、さらに天気がこの身に追い打ちをかけてくる日は一層体力の消耗が早いです。
~どこまでも、お客さんに寄り添う接客~
“いつもの場所” に到着すると、トラックのエンジン音や音楽に気がついて、一人、また一人とお店にやってきます。
要るものを書いたメモを見ながら買う人もいれば、
店に来てから買うものを決める人もいます。
自炊はあまりせず揚げ物をよく食べる人、
畑で育てているから野菜はあまり買わない人、
子どものためにパンをたくさん買う人…
本当にいろんな方がいらっしゃいますが、週に1~2回、同じ場所を回り続けるうちに、誰が何を買うのか、どういうものが好みなのかということがだいたいわかってくるようで、山田さんはその日回る先に合わせて、仕入れる物や量などにも変化をつけているとのこと。
○○さんはこれ食べるかな?と、相手の顔を浮かべながらの商品選びも意識しているそう。
「こっちの豆腐は12個入りで、小分けにして一つずつ食べられるよ。どう?」
「今日はマグロのお刺身あるよ」
「この佃煮すごくご飯に合うから、ぜひ食べてみて」
一人ひとりの買うものの傾向に合わせて、寄り添いながら一緒に買い物を進めていき、さらには喜んでもらえそうな物をお勧めしていきます。
また、お客さんが目当ての商品がないと言うときには、欲しいという商品をメモし、次回、販売の際には持って行けるようにするなど、お客さんに寄り添った接客を徹底しています。
そんな山田さんを見よう見まねで、私も微力ながら販売に加わっていきます。
今日買うものや夕食について、最近あった出来事や、この頃の天気、畑や庭の様子、どういう暮らしをされているのか、ご家族のことなどなど…
とくし丸にやってきた皆さんと話題広くさまざまな会話をしながら、一緒に車の中から探したり、どちらが好みかお聞きしたりして買い物のお手伝いをさせていただきました。
お客さんの体調が優れず、天気も悪い日には、必要なものを私が直接お伺いしてメモした物をカゴに入れることもありました。ほかにも、道路の向かいのお家まで買い物袋を運んだり、玉ねぎを買い忘れたというときには届けに行ったりと、忙しく動き回りました。
~山田さんの想いが店をつくる~
山田さんは、商品全般において自分がよいと思った物しか販売しないと言います。
とくし丸は毎朝ヤマザワで商品を仕入れますが、店内の商品の中でも山田さんが特に良いと思った選りすぐりの物を中心に、販売車に並べるようにしているそうです。
中途半端に選んだものをお客さんは買わない。
安いかどうかより、高くても美味しそうな物の方が買ってもらえる。
陳列されている商品のなかにはもう少し安くて手頃な物がありそうなのに、気持ち値段が高めな物が多い理由はそこにありました。
自分がおすすめしたい、いいなと思っている商品は売れていくが、安いという理由だけで選んだものはあまり売れ行きがよくない。それを選んだ自分の気持ちは商品を通して伝わる。
お客さんには良くも悪くもわかってしまう。
販売を続けるうちに、山田さんはそのことに気づき、商品の選び方を見直したそうです。
また、一日の訪問先が終盤に近付くとどうしても少なくなってしまいがちな商品ですが、いつも多めに取り揃えているとのこと。選べる楽しさを味わってもらえるようにという、山田さんなりの心遣いです。
最初は一軒一軒まわって移動販売の宣伝をしていたとくし丸ですが、今では一日50人近い方が利用していて、新規のお客さんの受け入れ対応が難しい状況にまでなっているそうです。
1人当たり3~4000円ほどお買い上げいただくそうで、潤沢とまではいかないまでも、きちんと売上が立ち、生業としてかれこれ4年も続けるに至っています。
「ご年配の方は話し相手が欲しいと思っている人も多いから、自分と話して楽しい気持ちになってもらって、笑いながら買い物ができたら、商品をすぐ近くで買えることだけじゃなくて気持ち的にもプラスになれる。
一般的なスーパーではたくさんの品物から選ぶことはできるけど、人とのやり取りはほとんどない。でもここならコミュニケーションが取れるし、要望に合わせて商品も用意できる。そういうところがとくし丸の良いところかな」
毎朝、商品を仕入れて、10時半ごろには出発し、19時過ぎまで販売に回り、それから残った商品を片付けるなど締めの作業に入り、帰宅するのは毎日22時を過ぎるそうです。
決して楽ではないけれど、仕事には常に前向きに取り組まれていらっしゃいます。
ちなみに、2日に1回は給油に行き、ガソリンを満タンにするとのこと。通常の生活では考えられないですが、一日中走り回り、生鮮食品やアイスなどを冷やしておくためにも燃料を使うことをかんがえれば、消費量が多くなることも頷けます。
大変でも、自分が楽しいと思いながら仕事をするのが大事だよね、と山田さん。
買い物に居合わせた近所の方々が楽しく談笑する姿を見たときには、山田さんが私に語ってくださった想いは少しずつでもかたちになっていっているのだなと思いました。
とくし丸は今日も、山田さんなりの思いやりものせて、高畠町を駆け回っています。
~体験を通して思ったこと~
優しい
いい人だ
来てくれないと困る
この人だから買う…
利用する皆さんに、とくし丸について感想を伺うと、口々にそういった声が聞かれました。
山田さんの一つひとつの気遣いや細やかな対応も含めて、この町の移動販売は成り立っているのだなとひしひしと感じられると同時に、人の暮らしを支えるということの奥深さにも気付かされました。
その仕事をする回数、仕入れ先の人と話す回数、お客さんであるその人と話す回数…、数を重ねることで、仕事への想いは募り、場面ごとにその想いは色濃く出てくるのだろうと思いました。
私も日々、経験を積み重ね、想いを育み、やがては人へ届けていけるようになろうと思っています。
以上、今回は「とくし丸」さんでの活動報告でした。
今回、体験中に、お客さんにおはぎや手作りの漬物、料理を振舞っていただいたことが思い出に残っています。ちょっと休んでいって、とお声がけいただき、一息つきながら 私にとってはおばあちゃん世代にあたる方々とお話する時間。久しぶりのことで新鮮でした。
ご飯、美味しかったです!
さてさて、次回もとある会社にお邪魔させていただきます!それではまた、お楽しみに~☆
【今回の体験先】
名称 :移動スーパーとくし丸
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