top of page

【協力隊の高畠トライアル】愛犬のおやど エビスヤさん

こんにちは!高畠町地域おこし協力隊松原由侑(まつばら ゆう)です!


引っ越してきて、あと少しで半年になります。高畠での暮らしにも馴染んできました。とはいえ、昼間の暖かさに反した朝晩の冷え込み具合には体が驚いております(笑) 


さてさて、相変わらず、高畠町内の各所で仕事体験をさせていただいている私ですが、3か所目となる今回は「愛犬のおやど エビスヤ」さんにお邪魔してきました。


今回はいつもとは一味違う形での活動となり、私自身も、ちょびっとサービスづくりに挑戦しました。少しボリュームのある記事となりますがお付き合いいただければ幸いです。



~ペット目線の宿づくり~


犬の宿って、どういうところなんだろう…?

エビスヤへ初めて訪問する道中、私はぼんやりと考えていました。


私はペットを飼っていませんし、飼ったこともありません。そんな私からすると、ペットと一緒に宿に泊まるということ、そもそもペットとともに過ごすということすら、あまりイメージが沸きませんでした。


いや…まあ…犬を連れて一緒に泊まれるってことはわかるのですが…

とはいえ、いまいちピンと来ない。

ペットと泊まれる宿は、そうでない宿とどう違うのか…

うーん、ちょっと想像がつかないなあ………ん、なにこれ…?


宿へ到着し、玄関に入る前に私は立ち止まりました。

足元を見ると白いものが点々とあります。



それは、犬の足跡を模したペイントでした。

おお、遊び心があるなあ。


さらに、入ってすぐ目の前には、一際目を引く飾り物が。

目を留めてしまう華やかな飾り物

話を聞くと、地域留学で高畠町へやってきた大学生が手作りした ペットと撮影できるフォトスポットとのこと。

花笠、そしてこの時期が旬のぶどうが並び、いかにも山形らしく風情があります。


愛犬のおやど エビスヤは、犬をはじめ、猫やウサギ、小鳥など、基本はだいたいどんな動物との宿泊も受け入れているペットと泊まれる宿です。お客様の8割方は犬を連れていらっしゃるのだそう。


以前は一般的な旅館だったこともあり、ペットを連れていなくても宿泊可能で、宴会場も併設されており、夕食のみの受け入れもしています。


ペットと泊まれる宿を始めたのは3年ほど前のことで、始めてからまだ年数が浅いこともあり、宿を充実させるための取り組みを広く行っているそうですが、その一つとしてフォトスポットづくりをしているそうです。

ほかにも廊下の至る所に、さくらんぼや温泉、日本酒などをモチーフにしたフォトスポットがいくつもありました。




もっとペットのために…そのご家族のために…

快適で楽しく過ごしてもらえる宿にするには…


代表の井田和史(いだかずし)さんは、人だけが泊まる宿との違い、ペットを中心とした宿づくりに日々悩み考えながら、様々な仕組み・仕掛けづくりに取り組まれています。


井田さんと愛犬のひまわりくん

さっそく見せていただいた客室は、一見どこの宿にもある宿泊部屋と何ら変わらないように見えましたが、奥へ進むと工夫が施されていました。

棚には一般的なアメニティが一通り揃っていましたが、その下にはゲージとペット用のトイレ、掃除道具や替えのシートなどが置いてあります。


棚は押し入れだったところをペットも人も使いやすいようにリメイクされたとのこと。


「新しく何かを作るんじゃなくて、すでにあるものを今のエビスヤに合うように活かしていくこと、見せ方を変えていくことを大事にしています。一応、ゲージは用意しているけれど、部屋の中ではワンちゃんには自由に動いてもらっていいことにしています。寝る時も一緒にベッドで寝てもらっていいし、もう本当に好きなように過ごしてもらえれば…(井田)」


すぐ隣で愛犬と寝てもよいというのは、やはり飼い主側からすると嬉しいポイントですよね。




「下の方や床には細かいもの、角が尖ったようなものは置かないようにしていて。犬目線で見たときに危なくないか、邪魔になるものがないか、そういうところは意識してやってますね(井田)」


私は部屋を一通り眺めてみましたが、なるほど確かに、ぶつかって怪我をするようなものはほとんどなさそうです。


館内に関してはリードをつけていれば、どこでも並んで歩いていいとのこと。

わざわざ抱きかかえる必要はなく、犬のペースで移動ができるので、犬にとって快適かもしれません。


続いて、大変広いお部屋に案内いただきました。

単なる大広間かと思いきや、そこはドッグランのお部屋でした。



エビスヤのチェックインは14時からで、チェックアウトは翌日11時までです。

それだけ長くゆっくりと過ごせることは魅力ですが、やはり犬としては手近に広々としたスペースは欲しいところです。

あいにくの雨で外出を控えたいときも、犬が駆け回れる場所が屋内にあることで、ペットがストレスを感じにくい時間を過ごすことが可能になっています。

ドッグランだけの利用もできるそう。


ここまで聞くだけでも、ペットと泊まりたくなる要素が満載ですが、エビスヤの特筆すべきことはまだあります。


旅館に泊まって過ごす中で、一番肝になる時間。

それは食事の時間です。

せっかくの旅行だからこそ、普段食べないような豪華なものを犬も食べられるようにと、山形らしく米沢牛を、人にはもちろん、犬にも提供しているのです。


ペットと泊まれる宿は、食事は飼い主が持参、あってもペットフードの提供というところが多いようです。専用のメニューを出している所もありますが、それでも米沢牛をここまで味わえる料理をペット向けに用意している宿は珍しいです。

犬には油身のないところを提供しますが、お肉は人間用ですから、もちろん人も食べることができます。





ペットと泊まれる宿と一口に言っても、その形態は様々です。


井田さん自身は犬を3匹飼われていますが、一緒に宿に泊まったものの、全然一緒にいられないし、ペットも自分も自由さがないと、サービスの不十分さやルールの厳しさを感じたそうです。


ペットは常にゲージに入れておかないといけない…

ゲージから出すのはいいが、ペットをベッドに乗せてはいけない…

レストランにはペットを連れて行ってはいけない…

食べる料理が値段に見合わない…

ペットだけはいつもと変わらないご飯を食べる…

そもそも滞在時間が短い、などなど…


だからこそ、自分の宿ではそうした不満の無いよう、可能な限り制限を取っ払った滞在ができるようにと環境にこだわっているのだといいます。


「ペットの宿」だからこそ、人よりもペット重視で、ペット目線で。

家族の一員として、なるべく同じ空間で、同じように過ごせるように。


ペットを愛してやまない人にとって魅力的な要素が盛りだくさんのエビスヤ。

“家にいるときよりも、自由に” をモットーに、ペットとの同伴率100パーセントの空間づくりを心掛けて、宿をつくっていらっしゃいます。



~エビスヤ発!マップづくりにトライ~


そんなエビスヤは現在、宿の認知度、そしてお客様の満足度を高めることに力を入れていきたいとのこと。ある程度ベースは整ってきたものの、まだまだ手付かずになっている やりたいことがたくさんあるといいます。


そういうわけで今回は、純粋に宿の仕事をこなしていくというこれまでやってきた仕事体験の仕方ではなく、よりサービスの充実につながる活動に着手することとなりました。


私が取り組むのは、「高畠町のお散歩マップ作り」


宿に泊まったものの、「どこかおすすめの施設はありますか?」「近くにペットと行ける場所はありますか?」と過ごし方に迷うお客様から質問をされることが度々あるとのこと。

その手間が省けて、かつ、もう少し分かりやすくエビスヤらしいマップがあれば嬉しいとのことでした。


エビスヤは首都圏を中心に集客をしており、お客様は関東在住の方がほとんど。山形、ひいては東北のこともよく知らないという方が多いそうです。

そこで私は最初、山形県内の観光マップをつくることも考えました。

滞在中に米沢や蔵王、山形市街まで遊びに出る方もいるとのことで、広域のマップにも需要はあると思ったからです。


ですが、エビスヤを通して高畠町まで来ているのに、この町のことを知らずに全く別の場所へ行って楽しんで家に帰ってしまうというのは、なんだかすごく惜しい、もったいないことをしているような気がしたのです。

この点がやはり、この町の協力隊だからなのでしょうか。もちろん、行きたい場所があるならそれでかまわないのですが、せっかく高畠に来ているのなら、高畠のことも知って楽しんでいってもらえたらいいなと思うのです。


町内でも高畠ワイナリーさんなどの有名どころはネットですぐに情報が手に入りますが、ローカルなスポットの情報はなかなかキャッチしづらいもの。

今回はエビスヤ周辺から歩いてもいける範囲の所を中心におすすめのスポットを絞り、高畠町内を散策できるようにまとめることにしました。


デジタルに多少の苦手意識があることもそうですが、もともとアナログ志向な私としては、マップは手描きで作るのがいいなと思っていました。

しかし、その話を事務局の他のスタッフにすると、エビスヤの雰囲気には手描きは合わないのではないかとの意見が上がり、そういうことならとパソコンで作ってみることに。


そこで使用するAdobe Illustrator(アドビ イラストレーター)というアプリ、ものづくり関係のことをされている方は使ったことがあるかと思いますが、操作の選択肢の多さに、私は起動するたびに圧倒されています(笑) きっと高精度で便利なんでしょうけれども、何度使っても各ツールの使い方や違いを把握できず、仕様が複雑に思え、不自由すら感じてしまいます。

編集を続けていくと突然背景がなくなったり、順番や設定を一つ間違えただけでうまく機能しなかったり……うーむ、わからん。。


私はそんな、なかなか言うことをきかない Illustratorと日々格闘し、アドビアレルギー(※)を少しずつ克服しながら、なんとかそれらしい形のものをつくっていきました。ネットで作り方を調べて順を追ってやってみると、意外にもすんなり作れました。手間はかかりますが、勝手がわかると便利なものですね。


※アドビアレルギー…Illustratorなどのアプリを含む、Adobe Creative Cloud(アドビ クリエイティブ クラウド)のソフトを起動した際に発症する。主な症状としては、苛立ちや焦り、ため息の増加のほか、困惑から来る疲労感、無力感、やる気の喪失など。一時的なめまいや頭痛が伴うこともまれにある。松原特有の症状。



一通り形になってから、あんまりソフトを使うことに慣れてなくて…と言いつつ、四苦八苦しながら作ったマップを持って行きました。

もちろんこういうものでもいいんだけど…と井田さんが言った後、続けた言葉が印象的でした。


誰でも作れる、どこにでもありそうなものじゃなくて、うちだけにしかないマップがいいよね。ペットの宿らしい、あたたかみがあるっていうかさ。

松原さんが作るんだから、松原さんがいいと思うやり方で、いいと思うものを作ったらいいんだよ」


そこで私は、はっと気づかされました。

そうだ、私が作るんだから、自分のやりたい方法でいこう。

自分の方向性を自分以外の誰かや何かに委ねそうになってしまっていましたが、私らしいものを、そのうえでエビスヤでご活用いただけるようなものを、とこの一言で思い直しました。


マウスからクーピーに持ち替えて、作業再スタートです。

やっぱりこっちの方が断然スムーズ(笑)とはいえ、グーグルマップを見つつ、大きさや位置関係に気を付けながら作ると、案外時間を要するもので、あっという間に夕方になります。



案内したいスポットと関係のないスポットや道は極力描かずシンプルに…

細かな情報はいらないから、大きめの写真を使ってスポットの雰囲気がわかるように…

各スポットに番号を付け、写真を横に揃えて掲載してわかりやすく…


制作する中で何度か話し合いをし、出来上がったものがこちら。





犬の散歩がてらに立ち寄れる、滞在時間が短い人でも訪問できる、決して全国的に話題になるほどビッグなスポットではないけれど、この地に根付いた高畠らしい場所を取り上げ、エビスヤからの距離感がわかるように、全体のマップと3つのルートの4種類に分けてまとめました。


私の描いたマップを写真に撮り、実際に写真を取りに行くこともして各スポットの写真をあつめ、それらをIllustratorに取り込みます。文字、番号など必要な要素だけをパソコンで書き加えていきます。

Illustratorでマップを作った際にある程度操作を覚えたことで、ちょっとした作業ならできるようになりました。あの時間は生かされていますね。

パソコンの手書き風なフォントもあいまって、描いたマップが溶け込み、デジタルとアナログのいいとこ取りで、ほのぼのとしたお散歩マップの完成です。


松原らしくて、エビスヤのお客様が見やすいもので、かつ、高畠のゆったりした空気感も表現したものになったのではないでしょうか。


見た瞬間、「おお、いいじゃん。見やすくなったね」と井田さんは声を上げてくれました。

遠方からいらっしゃったお客様にとって、高畠での過ごした方の提案の一助になればいいなぁと思います。



~エビスヤがペットの宿になるまで~


エビスヤは創業170年。

料理屋や茶屋、農家さんの住まい、鯉の缶詰工場などを経て旅館になり、それから現在はペットの宿へと姿を変えて、代々引き継がれてきた老舗です。


エビスヤが鯉料理屋だった頃の店構え

井田さんご自身は、高校卒業後に大阪に出て調理師免許を取得し、調理関係のお仕事を長らくされていたとのこと。

しかし、25歳くらいのとき、父親から声が掛かり、当時ご両親が経営されていた旅館の手伝いをすることになりました。


高畠に戻ったはいいものの、都会ほど情報が入ってこないことや、町の人口が減る一方であることに不安を覚えはじめました。そんな中、代表として旅館を受け継いだ井田さんはこのまま続けていくのは厳しいと見切りをつけ、方向転換をすることに。

コロナ禍の2021年頃、ペットと泊まれる宿として運営形態を改めました。


方針を変えたことで、離れていったスタッフやお客さんもいて宿はマイナスからのスタートに。それでもペット連れ向けの宿としてやっていくと決意したのは、人の数は減っても犬や猫を飼う人の数は増えていることを知り、今までよりもターゲット層が広がるだろうと見込んでのことでした。


実は井田さん、ペットはもともと好きではなかったそう。

私はそれを聞いて驚きました。事業を始めたのは好きであることも理由にあるのかと思ったらそうではなく、全く関心のないところから始めたとは。

知識は一からの吸収でしたが、学ぶうちに面白さも沸き、自分でも犬を飼い始めたことで、理解が進み、どんどん可愛さを感じ始めたそう。


「お客様にとって、ペットは確かに家族の一員、子どもというような存在。ペットなんだけど、人と同じように扱っていくというかね。とはいえ、接し方は人によって違いますから、些細なことでも違いをつかみながら距離感や向き合い方をお客様ごとに変えています。より快適に過ごしていただけるようにするための気遣いとして大事だと思って意識していますね(井田)」


犬そのものについて詳しくなることもそうですが、自分の連れたペットへの対応にお客様が満足すると、会話も弾み、距離も近くなる。相手のことをより知ることができれば、その方にあった立ち振る舞いがよりできるようになる。そうして喜んでもらえれば、また滞在してもらうきっかけになる。


初めて宿泊したときに頼んだ飲み物を、2度目の宿泊のときに覚えてくれている。

その体験が感動につながり、何度も行く理由になる。


住んでいる所からは決して近い距離ではないけれど、わざわざエビスヤを選んで来てくださる方もいらっしゃるとのこと。

ペットだけでなく、飼い主にも細やかな気配りをする、人へのアプローチの手を抜かないことが、リピーターを増やすことにつながっているのだと思います。


玄関前で記念撮影をするお客様の姿も。

「僕は最初からここまで意欲的だったわけじゃないけど、少しずつペットを好きになって、そこから情熱が生まれていったって感じですね。エビスヤってどういうところなの?って誰かに聞かれても、昔はうまく話せなかった。でも今では、それを自分の言葉でちゃんと言えるようになった。自分がやっていることに熱意をもって取り組めているって大事なことです。

情熱がなければ仕事ができないし、ひいては人を守れない。情熱があるからこそ進んだ先で挫折ができるし、だからこそ生まれる魅力があると思っています(井田)」


井田さんが働く上で大切にしている「情熱」というものをひしひしと感じるお言葉です。 



エビスヤが目指す未来、それはペットの宿の中で東北ナンバーワンになること。

東北にはまだまだ目立った宿がないからこそ、山形にあるエビスヤが第一線を行くペットの宿として名を馳せること。

エビスヤらしくて、もっと選ばれる宿にしていくために何ができるのか。

目標に向かって切磋琢磨する毎日です。


これまでのエビスヤの面影を残しながら、新たに芽吹いた文化が息づき、エビスヤはさらに進化を遂げながら活かされ続けていくのでしょう。

これからのエビスヤが楽しみです。


宿の真ん中にある池を背景に、井田さんと一枚


以上、今回は「愛犬のおやど エビスヤ」さんと、そこでの私の活動についてお届けしました。

井田さんが、この仕事は特殊な仕事だと思うと言っていたのですが、その言葉通り、私には自分が住んでいる世界とは別世界のようにすら思えていて、それくらい普段馴染みのない領域なんだなあと思いました。


そしてそして、私の作ったマップは、さっそく館内に掲示してくださいました。

うーん、我ながらよくできてる。頑張りました(笑) 素敵な壁ですねえ。




さてさて、次回もとある会社にお邪魔させていただきます!それではまた、お楽しみに~☆



 

【今回の体験先】

 施設名:愛犬のおやど エビスヤ

 住所:〒992-0351 山形県東置賜郡高畠町大字高畠812-1

 電話:0238‐52‐0013

 


閲覧数:92回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page